ツー、ツー、ツー、ツー、ツー

永遠に答えのない疑問が数多くあります。人生の意味とは?無意識の行為に責任は伴うのか?美とは何か?そして、なぜ、誰もかれも、陶製のセミを持っているのか?
Par Marine Normand

私はセミが大嫌いになってしまいました。セミという、この地球上でもっともうるさい虫が黙るのを待ち続けた夜が一体何晩あったことか、もう数える気もしません。夢の神モルペウスに抱かれて一秒も早く眠りにつきたいと願っているのに・・・。ですが、セミが鳴きやむことは絶対にないのです。夏に窓を開けて眠るのは、とうてい無理。オスのセミは夏を独身で終わることがないよう、膜を振動させ絶望的な試みを続けます。メスを振り向かせるためにどれだけの犠牲を払うのか?なんとも涙ぐましい努力ですが、セミたちが奏で続けるセレナーデは、まるでシンバルを叩きながら絶望的に愛を叫び続けている、と言ったほうがいいかもしれません。

それなのに、プロヴァンス地方にやってくる観光客はといえば、セミの声が聞こえると嬉しくてたまらないのです。この救いようのないおしゃべりで不眠症の虫への崇拝はいつ頃始まったのでしょうか。

オバーニュに住む有名な陶芸家ルイ・シカールは、1895年、マルセイユ瓦製造協会からプロヴァンスに最も適したシンボルを考案してほしいと依頼されました。そこでシカールは「太陽が出ると歌いたくなる」というキャッチフレーズをつけたセミを製作しました。以来、プロヴァンスの街や村では、このセミの置き物が必ず目につくようになりました。陶製でひとつひとつが鮮やかな彩りで飾られ、中には、人が近付くと自動的に鳴き始めるセミもあって、地元の人たちはこの発明を自慢に思っています。

このお土産は飛ぶように売れ、セミの大群でいっぱいのショーウィンドウの向こうでは、店主が満面の笑顔を浮かべています。プロヴァンスの思い出を自宅に持ち帰りたい人々に、このセミは大人気。陽光にむせかえり、タイムの香りに包まれたバカンスの思い出を、このセミが鮮やかによみがえらせてくれるからです。

このお土産は、誰にあげても喜ばれます。贈られるのは、単に陶器の虫というだけではなく、誰もが知っている記憶の断片、庶民文化の一部でもあります。

それは、マドラグで過ごすブリジット・バルドーをマスコミが追いかけまわした60年代を垣間見ること。バカンス村へ向かう夏の始まり、マルシェからの帰り道に、絶対いつかプロヴァンスに移り住む、と言いながらカウンターで飲んだパスティス・・・。このキッチュとしか言いようがないお土産を町へ持ち帰り、台所に誇らしく飾っている人は数えきれないでしょう。

このセミの土産は簡単に持ち運び可能で、海外でもコレクターたちの収集対象になっています。いつでも、どこでも、二つの羽に覆われたこのセミの置き物は、にぎやかに歌い出す瞬間を今か今かと待っています。あなたが目を閉じると同時に聞こえ出す「ツー、ツー、ツー、ツー・・・・」。

プロヴァンスのセミ
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プロヴァンスの伝統工芸
Photographie José Nicolas

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