ジャスミン、愛の物語

高貴な星型の花ジャスミン。夏は純白、冬は黄色になるこの美しい花は200種類以上もあり、土地や気候に適応して生育し、私たちを魅了します。
Texts: Sarah Carrière Chardon

中国でもお茶として親しまれているジャスミンはインドが原産の花ですが、旅好きの花だったらしく、ジャスミンという語はペルシャ語から変化したアラビア語に由来しています。語源だけを見れば、「ジャス」は絶望、「ミン」は嘘を意味し、これからやって来る大惨事を告げる言葉です。女性の花であるジャスミンは常に愛を象徴する花であり続けてきました。最近ではチュニジアの民主化運動の名称にも使われました。今後も各地でジャスミンは魅惑の花、運命の恋愛の花としてあり続けるでしょう。

ギリシャ・ローマ神話のエロスと愛の神のご先祖に当たるインドの愛の神カーマは、インドの神殿でジャスミンの花を穂先につけた愛の矢を放ち、クレオパトラは船の帆にジャスミンの香りをつけアントニウスに近づこうしました。セヴィニェ夫人は愛撫との交換にジャスミンを贈ることをヴェルサイユ宮殿で流行らせたとか。それも驚くべきことではないでしょう。

ジャスミンの花がもっとも愛されたのがグラースの町です。1560年、スペインの船乗りたちによってグラースの町にジャスミンが持ち込まれました。グラースの司教ゴドーがパリの友人に向け、オレンジの花と比べていかにジャスミンの放つ香りが強いかを記した17世紀の手紙が残されています。ジャスミンの花を摘む時期は、グラースに21人ほどいる手袋職人・商人および製造権を独占していた香水製造業者によって決定されていました。初期の頃は野生のジャスミンを花摘みをしており、ジャスミンの木々がジャスミン園にきちんと植えられるようになるのは適切な灌漑ができる運河の技術が発展する1860年代になってからのことです。

国際香水博物館の資料担当クロエ・ファルジエさんが次のように説明してくれました。

「150年以上もの間、ジャスミンの栽培および純粋なエッセンスを得るための加工はグラースが独占していました。当初はジャスミン産業はグラースでも特権的な扱いを受けていました。ジャスミン園はヴァンス(アルプ・マリティム県)からセイヤン(ヴァール県)にまで広がっていました。しかし、その後ジャスミン生産の減少が止まらず、現在栽培地があるのは東はバール・シュル・ルー、西はグラースまでの範囲に限定されています。ヴァール県においては、栽培地はファイヤンスからカリアンまでです。1925年まで唯一のジャスミンの生産地であったグラースでも次第に生産量が落ちて行きました」

つま8月初旬に行われるジャスミンの花摘みは現在においては非常に珍しい光景というわけです。ジャスミンの花は光と温度によって開花します。17度くらいの温暖な夜にもっとも香りを放ちます。ですので、夜明け前に起き、早朝に花摘みをするのが一番適しています。加工はその数時間以内に行わなければなりません。1リットルのエッセンスを抽出するのに、ジャスミンの花が700万本も必要です。必然的に使えるのは高級香水メーカーに限られ、メゾン・パトゥーが1930年に発売した香水「JOY ジョイ」をはじめ、いくつもの伝説的な香水に使われました。ジョイには、香水1オンス分にジャスミンの花が1万600本も必要だったとされています。それよりは庶民的な合成香水でも相応の天然の抗不安作用の特性があります。本物の花の詩には及ばないにしても・・・。

66年目の結婚記念日はジャスミン婚です。それは66年間の愛の証。そして待ち遠しくてたまらないのは今度の8月で開催66回目を迎えるグラースのジャスミン祭りとその時に行われる喜びにあふれた花合戦。

Musée International du Parfum / 国際香水博物館
2 boulevard du jeu de ballon
06130 Grasse
www.museesdegrasse.com
ジャスミンの摘み取り
ジャスミンの摘み取り
グラースにて
Photo: L'Occitane

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