オリビエ・ボーサン プロヴァンスのおとぎ話

ロクシタンの創業者であり、会社理念の要であるオリビエ・ボーサンは大変際立った人です。想像通りの人柄に近く、同時にまた、そのモダンさに驚かされもします。インタビューを掲載。
Par Caroline Taret
オリビエ・ボーサン氏にお会いすることは、プロヴァンスを愛している人間にとって、ちょっとした大事件。魅力あふれるボーサン氏は現代のプロヴァンスの化身のような方で、かつてマルセル・パニョルやポール・リカールがそれぞれの時代でそうだったようにプロヴァンスを象徴する存在です。ボーサンは自分にとって非常に大切なプロヴァンスを、一切損なうことなく素晴らしい土地に高めることに成功しました。プロヴァンスで生まれ育ち、エックス・アン・プロヴァンスで進学して文学を学びました。文学青年だったボーサン氏では今でもジャン・ジオノの「強い魂」から村上春樹の「1Q84」までを読破する大の読書好き。そして、型にはまらない生き方、考え方をする人です。1970年代末に蒸留の世界に出会い、エッセンシャルオイルや手作り石鹸の生産を始めました。プロヴァンスを愛してやまない彼にとって、子供の頃から香りに親しんできたハーブを蒸留するという事業はむしろ必然だった、とも言えるでしょ う。ローズマリーを手始めにビャクシン、ラベンダー、オリーブと次々に化粧品の効力に有効な成分を抽出していきました。そして遂に、1976年、大切な故郷に敬意を捧げた会社、ロクシタンを設立したのです。天然成分の製品を生産するために一切の妥協を許さない戦士ボーサンは、たちまちプロヴァンスにとって、なくてはならない人となりました。旅好きのボーサン氏にとって、新しい製品を生み出す原動力となるのは、思い出であり、出会いであり、そして願望。プロヴァンスのポストカード以上に、ロクシタンの製品はこの土地らしさを伝えてくれます。プロヴァンスに行ったらロクシタンは必ず求めたいブランドであり、 海外へもプロヴァンスの魅力を伝える大使のようなブランドとなったのです。オリビエ・ボーサンはロクシタンのオーナーではなくなりましたが、彼の理念は残っており、ロクシタンのアートディレクターとして、新しいアイディアやインスピレーションなど、つまりは彼の詩的なビジョンを常に社内にインプットし続けています。例えば今から11年前、バスティアの友人に会いに行った際にボーサン氏は偶然、イモーテルを加工している小さな蒸留所と出会いました。イモーテルとはコルシカの灌木地帯に生えているハーブで、放浪癖のある両親とコルシカに住んだことがあるため幼少の頃からよく知っているハーブでしたが、その蒸留所に出会うまでイモーテルを蒸留することは発想にありませんでした。しかし、その出会いがきっかけとなって、ロクシタンに革新的な新シリーズが誕生し、 コルシカにおけるイモーテルの有機栽培も発展しました。新しいハーブとの出会いを夢見るか、との質問にボーサン氏は次のように答えてくれました。

「私は偶然の出会いがいいと思っています。探そう、探そう、としていると見つからないものです。そして伝統に対して常に柔軟でありたい。職人の技が好きで、彼らの中に自分を見るような気がします。伝統に対する敬意に感動を覚えます」柔軟な態度はまさにボーサン氏が創設時から心掛けてきたものです。

「私の服装は本当はふさわしくないかもしれませんが、私は居心地がいいんです。なぜなら、この格好なら誰とでも話せるから。田舎では、農家の人々も私も同じ格 好をしているので、お互いに相手がどういう人間かすぐに分かりやすい。私はひけらかすような態度はとりたくないし、一度もしたことはありません。他人との 間に垣根を作るようなことはしたくないんです。ロクシタンの創業当初は親交があったのは小規模な生産者たちでしたが、私が若く、やろうとしていることに確信を持っていたわけでもないのに、彼らは私を信頼し、敬意を払ってくれました。それは、私が彼らと同じ言葉を話し、同じ目線で自然を見、月並みで陳腐なこ とを言わなかったからです。先入観や決めつけは嫌いです」

エコに話題が及ぶと、プロヴァンスの申し子は面白そうに次のように話しました。

 

「エコなんて言葉、自分はもう使いませんね。古い言葉はもう少し時代の感覚に合った言葉に言い換えたい。例えば、公正取引という言葉の代わりには共同発展とい う言葉を使ったほうが合っているように思います。最初は自分のことだけを考えて発展しようとするものですが、みんなも発展しつつ自分も発展できたらなお良い、と私は思うのです」

 

1980年代から実施している彼の経営哲学です。シアバターを加工するためにブルキナファソに赴いたとき、 ボーサン氏はシアバターの木の実の採取を唯一許可されている女性たちを援助するプログラムを立ち上げました。シアバターは、プロヴァンス産原料ではないにもかかわらずロクシタンで美しい物語へと成長しましたが、その物語に新たな一章を加えたのが、オリビエ・ボーサンがブルキナファソの女性たちのために設立した ロクシタン基金の活動です。

ボーサン氏一番のお気に入りの製品、シアバターのハンドクリームはロクシタンブランドにおけるベストセラーになりました。しか し、無意識なのか、癖なのか、ボーサンは謙虚な態度を崩しません。もう人柄にしみ込んでいるのでしょう。フランスのナチュラルコスメ業界においてもっとも 成功した事例であり、それは彼に負うところが大きいのにも関わらず、ジオノの作品について話すほうがマーケティングをするより楽しい、と言ってのけ、私たちを驚かせます。彼のプロヴァンスに対する情熱は、他を排除するようなものではありません。そしてロクシタンの国際的な成功の秘訣は、このような世界に開けた態度にあるのでしょう。話題が建築に及ぶと、ロクシタンの創立者は興奮ぎみに建築家による特別展がしばしば行われるル・ピュイ・サント・レパラードに あるシャトー・ラ・コストについて語り、フォルカルキエ村にある史跡に指定されたほど歴史のある自身の家ではなく、モダニズム建築を代表するミース・ファ ン・デル・ローエ設計の近代建築に住んでいる自分も十分想像できると言います。リル・シュル・ラ・ソルグ村のアンティーク市で掘り出し物を探すのと同じくらい、モダンな作品を見るのも好きなのです。彼が嫌うのは紋切り型なプロヴァンスのイメージ。もっともっと他に見るべきものはたくさんあると言います。

ボーサン氏はボニファチオの港で舟に乗り、世の中の人がツイッターをするように、町に住む友人たちのために俳句をひねって時間を過ごすことがあり、そのようなゆっくりした時間を持つことを勧めています。ゆとりのある時間を過ごしてこそ、美しいものはやってくるのです。 

「心を開いていると物事が向こうからやってきます。私は新しいものを発掘することに時間をかけたい。新しく見出したものに慎みと心遣いを持って接すれば、それは大きな喜びとなります。敬意を払えば、何ごとも、穏やかに時間をかけてやってくるものなのです」

ボーサン氏はプロヴァンスについてだけ話しているのではないのでしょう。愛についても語っているのです。

オリビエ・ボーサン プロヴァンスにて
オリビエ・ボーサン プロヴァンスにて
1976年
Archives L'Occitane
オリビエ・ボーサンとブルキナファソ
オリビエ・ボーサンとブルキナファソ
1980年代
Archives L'Occitane
オリビエ・ボーサンとイモーテル
オリビエ・ボーサンとイモーテル
コルシカ島
Photographie L'Occitane

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